電磁波⑫

 広い宇宙のどこかには、我々地球上の人類以外にも知的生命体が存在するのだろう。これは、決して不自然な発想ではありません。しかし、たとえ存在したとしても交信するのはなかなか困難です。
 現在、電波を利用して地球外知的生命体を探し出そうというプロジェクトが進行中です。電波をどのように利用しているのでしょう?

 現在、私たちは地球上で電波を使った通信を盛んに行っています。もし、地球外に存在する生命体が我々と同じような知能を持っていたら、きっと同じように電波を使った通信を行っているのではないだろうか。このような予想(期待)から、彼らが通信のために発した電波を地球上のアンテナで受信しようという試みが続けられているのです。
 しかし、この試みには困難があります。
 1つは、すでに地球上で電波通信が盛んに行われているため、その電波と区別する必要があるという点です。この点をクリアするために利用されているのが、周波数1420 MHzの電波です。実は、この周波数の電波は宇宙空間に最も多く存在する水素のエネルギー状態変化によって放出されます。そのため、電波による天文観測では重要なメッセージとなる電波であり、地上の通信で利用すると天文観測に悪影響を与えるため、発信が制限されているのです。よって、1420 MHzの電波であれば人間が発したものではないと確認できるのです。
 もう1つは、太陽などの恒星が放射する電波と区別する必要があるという点です。これは、特に強く受信される特定の周波数の電波を見つけることでクリアします。恒星が発する電波には幅広い周波数のものが混ざっているので、特定の周波数だけが強いということは、自然由来でなく何らかの存在により発信されたものだと考えられるからです。また、周期的に強さが変化するパルス波となっていれば、やはり自然由来ではなく信号である可能性が高まります。これらの点を考慮に入れて、先ほど述べたように1420 MHz付近で観測を行っています。

 最終的には、受信した電波の解析に膨大な計算を必要とします。これを可能とするのがスーパーコンピューターですが、いろいろな研究で利用されるスーパーコンピューターの使用には限度があります。
 そこで、1999年から分散コンピューティングというプロジェクトが進んでいます。これは、世界中の一般の人が所有するパソコンに計算を振り分けて行うという試みであり、現在世界中で約520万人の人が参加しているそうです。パソコンを使用していない時間帯に計算するため、普段のパソコンの利用には影響せず、参加しやすいという利点があります。
 この壮大なプロジェクトによって、地球外の知的生命体の存在を知ることができる日がやってくるかもしれません。




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