電磁波の性質を説明してきましたが、実は電磁波には物体を動かす力もあるのです。
電磁波がある空間に、原子1個が置かれた状況で説明します。
原子の中には電子があります。電子は-の電荷を持っていますので、振動する電場から力を受けます。すると、原子の中で電子も振動するようになります。このとき、電子の振動方向は電場の向きと一致します。
電磁波は、振動する磁場も含みます。そのため、原子中の電子は振動する磁場からも力を受けることになります。運動する電子が磁場から受ける力はローレンツ力であり、次のような向きになります。
ローレンツ力の向きは、電磁波の進行方向に一致します。つまり、電子は電磁波の進行方向に力を受けるので、原子がその向きに移動していくことになるのです。
この原理は、2010年に日本で打ち上げられた惑星探査機イカロスに利用されています。
イカロスは、14
m四方の大きさの帆を持つ宇宙ヨットです。厚さはわずか7.5
μmですが、質量は308
kgあります。イカロスを推進させる力は、太陽光(=電磁波)だけです。電磁波による推進力だけで、宇宙空間を進んでいくのです。
もちろん、電磁波による推進力は1.12
mNとごくわずかです。308
kgのイカロスに生ずる加速度は3.64
μm/s2という小ささですが、「塵も積もれば山となる」で、1年後には115
m/s(=414
km/h)もの速さになるのです。
今回は電磁波の推進力について、電磁波を波として考えて説明しました。
電磁波は波だけでなく粒子としての性質も持っていますので、この観点から考えると、イカロスに太陽から飛んでくる光の粒子(光子)が次々と衝突することで、イカロスは加速していくのだとも理解できます。
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