テレビ放送も、もちろん電波によって行われています。
アナログ放送時代には、VHF(超短波)帯の90
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220 MHzの電波と、UHF(極超短波)帯の470
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770 MHzの電波を使っていました。
しかし、VHF、UHF帯の電波は携帯電話でも使用しますので、携帯電話の普及に伴ってこの帯域が大変混雑してきました。
そこで、テレビ放送に使う電波の周波数帯をコンパクトにする目的もあり、デジタル放送へ移行しました。デジタル放送となって、使用する電波はUHF帯の470
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710 MHzに収まるようになりました。これにより、空いた帯域を携帯電話などで利用することが可能となったのです。
ところで、デジタル放送はアナログ放送と何が違うのでしょう?そのことについて、簡潔に説明したいと思います。
「アナログ」とは連続している(つながっている)ことを、「デジタル」とは離散している(とびとびの値である)ことを表します。アナログ時計とデジタル時計を思い出してもらえれば分かると思います。
電波だと、次のようになります。
では、デジタル放送では上のようなデジタルな波を使っているのでしょうか?
実はそうではありません。デジタル放送と言えど、使用しているのはアナログ波です。ただ、アナログ波を使ってデジタルな情報を送っているのです。
デジタルな情報というのは、2進法の「0」or「1」という情報です。次のようなルールを決めることで、このデジタル情報をアナログ波によって伝えることができるのです。
これが、「アナログ波によってデジタル情報を伝える」デジタル放送の仕組みです。
なお、次のように位相のずれのパターンを増やすことで、対応させる情報をさらに増やすことができます(例えば111から000までの8通り)。しかし、誤受信が増えてしまうというデメリットもあります。
デジタル放送では、圧縮技術も利用されています。画像情報をその都度すべて送っていたのでは情報量が膨大になってしまうので、前画面から次画面で変化している部分の情報のみを送る、という方法です。これによって情報がかなりコンパクトになります。
ちなみに、テレビ放送で使用する電波の周波数は、前回記したラジオの周波数より大きいです。ということは、ラジオの電波より波長は短く、回折の度合いはより小さくなります。アンテナが高いビルなどの陰に隠れるとうまく受信できないのは、このような理由によります。
ケーブルによる情報伝達であれば、電圧のオンとオフや、光の点滅を使うことでデジタルデータを伝えることができます。電波で情報を伝えるときにはこのようなことは難しいので、今回紹介したような工夫をしているのです。
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