世界中で、電気は「交流」の形で送られていることを説明しました。なぜ「直流」ではなく「交流」なのでしょう?「交流」が選ばれるようになった歴史をのぞいてみたいと思います。
1879年、エジソンは白熱電球を発明しました。そして、各家庭で電球を使えるようにするため、エジソンはニューヨークで電線を引く事業を始めました。このときの送電方式は「直流」でした。
しかし、直流送電に異議を唱える人物がいました。エジソンの部下であったテスラです。テスラは、「交流」で送電すべきだと主張しました。交流には2つのメリットがあるからです。
1つは、変圧器を使って電圧を変換できることです。
電線を通して長い距離を送電すると、どうしても電力ロスが生じてしまいます。しかし、高電圧で送電すると、そのロスを小さくできるのです。そこで、現在の送電は次のように行われています。
このように電圧を変換できるのは、交流だからです。直流ではこのようなことはできないため、もし直流で送電すると電線での電力消費が非常に大きくなってしまうのです。
もう1つの交流のメリットは、「交流モーター」を使える点です。
「交流モーター」は「直流モーター」と違って、ブラシや整流子が必要ありません。直流モーターではブラシと整流子の間で摩擦が生じるため、定期的に交換する必要があります。
また、直流モーターの場合は電圧を変えないと回転数を変えられません。しかし、交流モーターなら周波数を変換することで回転数を制御できます(以下のようなインバーターという装置を使います)。
モーターの回転数は周波数で決まるため、上の装置でモーターの回転数を制御できるのです。掃除機、エアコン、冷蔵庫などの強弱の調整はこの仕組みで行われています(「インバーターエアコン」というのは、強弱を調整できるエアコンのことです。これが無かった時代は、エアコンのスイッチにはON/OFFしかありませんでした…)。
このような2つのメリットがあるため、「交流」に軍配が上がったのです。
交流を主張したテスラはエジソンと袂を分かち、ウェスチングハウス社の創設に携わりました。ちなみに、エジソンが築いたのがGE(ゼネラル・エレクトリック)社です。
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