磁石の歴史

 身近な電化製品には、たくさんのモーターや発電機が使われています。その中では磁石が利用されています。また、パソコンなどでデータを記憶するハードディスクにも磁石が使われています。冷蔵庫などで使う紙押さえの磁石、学校の実験で使う磁石などのように目に見えるところ以外でも、磁石はたくさん使われているのです。
 現在は超小型で強力な磁石もありますが、このような高性能な磁石は20世紀に入ってから発明されました。今回はその歴史を概観してみたいと思います。

 19世紀までの磁石の利用は、主に航海時の方位磁針としてでした。この頃まで使われていた磁石は、天然磁石です。天然磁石とは、雷などの自然現象で生じる強力な磁場によって磁化された鉄鉱石などです。磁化した鉄鉱石は一定方向を向くことが発見されていたので、方位磁針として利用されていました。
 ちなみに、方位磁針は北極星から力を受けるために一定方向を向くと思われていました。しかし、航海を繰り返す中で、地球自体が巨大な磁石であり方位磁針も地球から力を受けているのだということが分かってきたのです。

 19世紀には、ファラデーによる電磁誘導の発見(1831)など、電磁気に関する発見が相次ぎました。特に電磁誘導の法則によって、コイルと磁石を用いることでモーターや発電機を作れることが分かり、これが磁石の主な用途となっていきました。

 20世紀に入ると、高性能な磁石が発明されていきました。そして、以下のまとめを見てもらえれば分かるように、磁石の発明に最も貢献した国は日本なのです!そのきっかけは、第一次世界大戦が勃発したことで1914年に日本への磁鉄鉱(天然磁石)の輸出がストップしたことです。「輸入できないのなら、自分たちで作るしかない」と必死になって研究した結果、次々と強力な磁石が発明されていったのです(ピンチこそチャンスであることが分かります)

 磁石は大きく、「金属系磁石」と「フェライト磁石」に分かれます。
 「金属系磁石」とは、合金を利用して作る磁石のことです。合金とする金属の種類、またその比率などによって磁石の性能が大きく変わります。
 「フェライト磁石」とは、酸化鉄を主成分とするもので、金属とは異なります。磁性を持つセラミックスと言えます。冷蔵庫やホワイトボードで紙押さえに使われている黒っぽい磁石は、フェライト磁石です。
 金属ではないので電気抵抗が大きく、そのため電磁石のコア()として使うときの発熱が少なくて済みます。また、微量の添加物によってキュリー温度(磁性を失う温度)を調節できるので、温度センサーとしても利用されています。









※ネオジム磁石の使用量の例

  ・ハイブリッド車 12 kg
  ・エアコン    60400 g
  ・冷蔵庫     4060 g
  ・洗濯機     80180 g



※ネオジム、ジスプロシウムの高騰

 ネオジム磁石は世界的に需要が高まっており、また高温でも使えるようにするにはジスプロシウムも欠かせない。そのため、取引価格が非常に高騰している。
 ネオジムは、2011ドル/kg以下で推移していたが、2011年に500ドル/kgほどまで急騰。2012年スタートでは、300ドル/kgほど。
 ジスプロシウムは、2009年半ばまでは200ドル/kg未満だったが、2010年に400ドル/kgを超え、2011年には3000ドル/kgほどまで高騰。
 特にジスプロシウムが高騰しているため、日本の企業や研究施設ではジスプロシウムの使用量を減らしたり、全く使わなくても高温に耐えられるネオジム磁石の開発に取り組んでいる(ジスプロシウムは中国の1か所でしか採れず、また量もネオジムの1割未満しか採れないことから高騰している)



※ネオジム磁石による省エネ

 ネオジム磁石を使うことで、モーターのエネルギー効率は飛躍的に高まる。エネルギーの半分以上はモーターで消費されているとも言われるほどなので、ネオジム磁石は環境に大きな貢献をしていることが分かる。また、ネオジム磁石が発明されるまでは高性能磁石にはコバルトという希少金属(コンゴやザンビアなどでしか採れない)が欠かせないというのが常識だったが、ネオジム磁石はコバルトを必要としない。











※これらを工業用に大量生産することに成功したのは、TDKなど日本のメーカー。




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