フラッシュラグ効果

 私たちが見ているものは、全て過去のものです。夜空にはたくさんの星が輝いて見えますが、その中には何億年も昔に放たれた光もありますし、もう存在しない星の光も含まれています。
 太陽光も、約820秒前に放たれた光です。私たちはリアルタイムの太陽を見ることはできず、820秒昔の太陽しか見られないのです(ちなみに、重力(重力波=空間の歪み)は光と同じ速さで伝わるので、太陽から地球が受ける重力も8分20秒かかって伝わってきます。ですので、もし突然太陽が消えても、地球上で8分20秒間は太陽光が見え、太陽からの重力も感じられることになります)。

 目の前にいる人を見るときも、ほんのほんのわずかですが、光が伝わってくる時間の分だけ過去を見ていることになります。でも、このようなずれは本当にほんのわずかで、むしろ光が眼に届いた後に脳内で処理するのに、より長い時間がかかります。

 今回のタイトル「フラッシュラグ効果」というのは、この脳内処理による認識時間のずれを補正するために、人間が兼ね備えている能力のことです。次の例で説明します。






 観測者の前を通り過ぎていく物体があるとします。物体が位置Aにあるときの光を見て観測者が物体を認識したとします。このとき、脳内処理のために認識するまでに多少の時間がかかってしまいます。すると、観測者が物体を認識した瞬間には、物体はAより前方にいることになります。








 このように、情報の脳内処理に時間がかかることが原因で、動いている物体の位置をリアルタイムで正しく認識できなくなるのです。しかし、人間はそれを補正する能力を持っています。動いている速度に応じて、届いた光の情報より少し前方に物体があると認識するのです(これは、無意識のうちに行われます)






 このフラッシュラグ効果は私たちが動く物体の位置を正しく把握するのに役立つ反面、困った問題も引き起こします。サッカーのオフサイドの誤審がその典型例です。
 フラッシュラグ効果は、動いている物体にしか働きません。止まっている物体は認識に時間のずれがあっても、位置が変わらないので問題ないからです。
 ですので、動いている物体と止まっている物体を同時に見たとき、次のように観測者は認識することになります。







 フラッシュラグ効果は動いている物体にだけ働くため、本当は同時刻に真横にいても、片方だけが前方に飛び出しているように見えてしまうのです。サッカーの場合、上図の青がオフェンダー、緑がディフェンダーに相当します。本当はオフサイドではないのに、オフサイドに見えてしまうのです。




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