世の中は、無数の原子・分子でできています。それらはじっと止まっているわけではなく、非常に激しく動いています。
例えば、目には見えないけれどもつねに私たちの周りに存在する空気。ほとんどは窒素分子と酸素分子ですが、気温15℃のときの窒素分子の平均速度は約510
m/秒、酸素分子の平均速度は約470
m/秒です。とてつもない速さで動いているのが分かると思います(気体分子がこのように激しく動いているため、大きな気圧が発生しているのです。また、実際に気体分子が1秒間で400
mも500
mも移動するということはありません。気体分子は無数に存在しているため、すぐに別の分子に衝突してしまって直進できないからです)。
分子はこのように激しく動いているため、エネルギーを持っています。これは、並進運動によるエネルギーと考えることができます。
実は、分子は並進運動以外の運動もしています。例えば、次のような回転運動です。
また、分子はいくつかの原子が結合してできたものですが、原子間の距離は一定ではなく伸縮しています(1秒間に10兆~1000兆回もの伸縮運動をしています!!)
例えば、二酸化炭素分子は赤外線を吸収して原子間の伸縮運動のエネルギーとして蓄えます。太陽から地球へ照射され、反射した赤外線を二酸化炭素分子が吸収するため、宇宙空間へ放出されず温暖化が進むというわけです。
以上のように、分子はいろいろな形のエネルギーを持っているので、分子のエネルギーの大きさは温度だけでは決まらず、分子の大きさによっても変わってきます。
大きな分子(たくさんの原子が結合してできた分子)は、たくさんの回転運動や原子間振動をすることができるので、大きなエネルギーを持っているのです。
ちょうど、銃身内壁のらせん状の溝で回転しながら発射されたライフル弾が、回転運動のために殺傷力がアップしているのと同じです。
例えば、水分子H2Oは3つの原子が結合してできています。そのため、並進運動のエネルギー以外に回転運動のエネルギー、原子間振動のエネルギーを持っています。水の比熱が大きいのは、このような分子構造に理由があります。
しかし、もっと大きい分子はたくさんあります。例えば、お湯を味噌汁に変えた場合、味噌汁の中の分子の大きさはH2Oとは比較になりません。だから、同じ温度のお湯と味噌汁を比較した場合、味噌汁の方がずっと大きなエネルギーを持っていることになります。温度が同じでも、お湯で火傷するより味噌汁で火傷した方がダメージが大きいのは、このような理由によります。
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