真空は存在するか

 古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、「真空は存在しない」と考えていました(真空嫌悪説と言います)。これは、「慣性の法則の発見」で説明したように、アリストテレスが「速く動いている物体ほど大きな力を受けている」と考えていたのが原因です(もちろん、現在はその考え方が間違っていたことがハッキリしていますが)

 アリストテレスの考え方は次のように説明できます。






 実は、この(間違った)考え方はアリストテレスの時代から約2000年間も否定されることがなかったのです。それは、真空が存在するという証拠がなかったからです。

 初めて人工的に真空を作り出したのは、ガリレオ・ガリレイの弟子であったトリチェリという人です。1643年のことです。
 トリチェリは、次の実験によって真空を作り出しました。






 このように、人々の目の前に真空を作り出すことで、トリチェリは2000年もの長きに渡って信じられてきたアリストテレスの真空嫌悪説を打破したのです。

 ちなみに、この実験は普通の水で行えばよさそうですが、水を使うと水柱の高さは水銀の場合の約13.6倍、10 mほどにもなってしまうのです(理由は、水の密度が水銀の約13.6分の1だからです)。それでは大変なので、密度の大きい水銀を使ったのです。

 なお、この実験から大気圧の存在が明らかになると同時に、その大きさが約1.0×105 Pa(1 m2 あたりに約10トンの力)であることも分かりました。当時は大気圧のことについても知られていなかったので、この実験がいかに画期的なものであったかが分かります。

トリチェリの時代には、ポンプで井戸から水を汲み上げる技術が発達していました。そして、井戸の深さが10 mあたりを越えると水が自重で下がってしまい、汲み上げることができなくなることが発見されました。このとき、水の上部には何もない部分(=真空)ができたと考えられました。トリチェリは、この現象をヒントに実験したと言われています。
なお、大気圧についてはこの後もさまざまな実験が行われました。
ドイツのゲーリケは、金属製の
2つの半球を合わせて中の空気をポンプで抜くと、馬の力で引いても開かないという公開実験を行いました(ゲーリケがマグデブルク市の市長だったため、この実験はマグデブルクの半球と呼ばれます)







 パスカルは、トリチェリの実験を追試するとともに、山上で大気圧が下がることも発見しました。圧力の単位Pa(パスカル)の由来になった人物でもあります。




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