ミサイル弾道の計算

  北朝鮮が「衛星」と称する長距離弾道ミサイルの発射を予告し、緊張が走ることがありました。
 万が一に備え、日本は弾道ミサイル防衛システムを準備しています。もし日本本土にミサイルやその破片が落下する恐れがあるときは、迎撃して爆破するというものです。
 ところで、長距離弾道ミサイルとはどれくらいの高度を、どのくらいの速度で進むものなのでしょうか。概略図を示してみます。
 




 図に示した速度は、それぞれの最高速度のおよその値です。
 また射程距離や最高高度には幅があります。上の図はあくまでも概略図であると理解してください。

 これを見ると、長距離弾道ミサイルがすさまじい速さで、非常に高い位置を飛行することが分かると思います。このようなミサイルを、どのようにして迎え撃つのでしょうか。
 ポイントは、“軌道の計算”です。つまり、何秒後にどの位置へ来るのかを予測(計算)できなければ、これほどの速度と高度で飛んでくるミサイルを迎え撃つことはできないのです。
 
 初期条件(スタート時点での位置と速度)が分かれば、ミサイルがその後どのような軌道を描くのか知ることができます(詳しくは力学分野の「放物運動」で学びます)。
 「初期条件が分かれば、その後の運動を予測できる」というのが「ニュートン力学」の本質です(20世紀に入ってからの「量子力学」によれば、ミクロな世界の現象は確率でしか予測することができません)。

 もちろん、ミサイルの軌道予測は高校物理で解く問題よりずっと複雑です。「空気抵抗」、「高度変化による重力の変化」、「地球表面の湾曲による重力の変化」、「地球内部の密度不均一による重力の変化」、「地球の自転の影響」などさまざまなファクターを踏まえて計算しなければならないからです。しかし、その基礎となるのは高校で学ぶ物理なのです。

 今回は物理の詳しい内容には踏み込めませんでしたが、高校で学ぶ物理が現実世界と密接に関わっていることを少しでも実感してもらえればありがたいです。


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