人間の腕の進化

 前腕を上げるときには、上腕二頭筋の力が使われています。上腕二頭筋とは、よく「力こぶ」と言われるものです。





 筋肉は伸びたり押したりすることはできず、縮むことで力を発揮しています。
 上腕二頭筋は、前腕の骨についています。次のように、曲げ伸ばしの支点から少しずれた所についているので、上腕二頭筋が縮むことで前腕が持ち上がるのです。





 個人差はありますが、上腕二頭筋は前腕の長さの7分の1くらい支点から離れた位置にくっついています。
 ということは、例えば前腕で何かを持ち上げるために10 Nの力を発揮したければ、上腕二頭筋は70 Nの力を出す必要があるということが、てこの原理から分かります。せっかく筋肉で力を生み出しても、発揮されるのはその7分の1になってしまうのです。
 こう考えると、損しているような気もします。でも、得していることもあります。それは、例えば上腕二頭筋を1 cm縮めることで、前腕(の先端)7 cm持ち上げることができるという点です。つまり、力は7分の1になってしまうけれど、動かせる距離は7倍になるというわけです。
 動かす距離が7倍ということは、筋肉を縮める速度に対して前腕を動かす速度が7倍になるということです。つまり、上腕二頭筋は力をロスする分、スピードを手に入れることになります。
 長い生存競争の中で、人間の腕は力を犠牲にする代わりにスピードを入手できるよう、進化してきたのでしょうか。

 


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