脚力と腕力

 60 kgの人が、階段を3階分登ることを考えます。建物によって違いますが、普通に歩いたら1分近くかかるでしょう。しかし、頑張ってダッシュして15秒で登りきったとします。
 このとき、仮に3階分の高低差を12 mとして、3階分登るのに要する仕事量を計算してみます。「仕事」=「力×距離」であり、体重60 kgの人にかかる重力の大きさは60×9.8 Nなので、12 mの高さを登るのに必要な仕事は 60×9.8×12 7000 J となります。
 そして、これだけの仕事を15秒で行ったとすると、7000÷15 470 W の仕事率で仕事したことになるのです。

 メートル法に基づく1馬力は、736 Wです(「馬力」というのは「仕事率」の単位のことなのです)。ですので、15秒で登りきっても、まだ1馬力には及びません。1馬力を発揮するには、7000J÷736W 9.5 なので、このくらいの時間で登りきらなければなりません。人間の脚力というのは、頑張れば1馬力を出すことができることが分かりました。もちろん短時間ですが。
 では、同じ1馬力を腕力によって発揮することを考えてみたいと思います。

 鉄棒を使って、垂直懸垂をした経験は多くの人にあると思います。1回の懸垂できちんと上がりきると、(個人差がありますが)だいたい55 cmくらい体を持ち上げる必要があります。
 ということは、60 kgの人が1回懸垂するのに必要な仕事量は、60×9.6×0.55 323 Jとなります。そして、もし垂直懸垂によって1馬力を発揮しようとしたら、323J÷736W 0.44秒で1回の懸垂を行う(つまり、1秒間に2回以上懸垂する)必要があることが分かります。ちょっとこれは無理ですよね。。

 こんな例を考えると、人間は腕力よりも脚力の方が、高い馬力を発揮できることが分かります。




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