1本の重い棒を、人の手で支えなければならない状況を考えます。
このとき、重い棒を支えるには「できるだけ大きな力」を与える方がよいことは、すぐに分かります。
しかし、発揮できる力には限度がありますので、その力を最大限有効に利用することを考えたいと思います。
まず大事なのは、「力を与える向き」です。次の2つの場合では、左側の方が棒を支える働きは大きくなります。
これは、棒の回転軸(地面に接している点)を中心とする力のモーメントが、左の方が大きくなるからです。
このように、「力を与える向き」によって棒を支える働きの大きさが変わることが分かりましたが、他にも要素があります。それは、「力を与える位置」です。次の2つの場合では、同じ大きさの力を同じ向きに与えていても、左側の方が棒を支える働きは大きくなります。
これは、左側の方が回転軸から遠いところに力が働いているため、やはりモーメントが大きくなるからです。
このように、「力を与える位置」によっても棒を支える効果が変わることが分かりました。
では、他には要素はないでしょうか?実は、あと1つあります。それは、「支える棒の傾き」です。
次の2つを比較してみます。
2つとも、棒を支える力の大きさは等しく、その向きは棒に直角になっているとします。また、力が働く高さも等しいとします(ある身長の人が力を作用させられる高さには限界があります)。このとき、2つの場合でどちらの方が棒を支える働きが大きいでしょう?
これは、感覚的にすぐに理解するのは難しいかもしれませんので、計算を使って考えてみます。
上の図の場合、力Fによって反時計回りに生じる力のモーメントは、
となります。このとき、棒に働く重力によって時計回りに生じる力のモーメントは
となります。2つのモーメントのつりあいから、
の大きさの力Fを与えれば、棒を支えられることが分かります。
この値はθ=45°で最大となるので、この角度が最も非効率的ということになります。
ここからθの値がずれれば必要な力Fも小さくなって効率的です。θを小さくしすぎれば、棒の長さが不十分だと高さhで支えられなくなりますが、θを大きくする場合には問題ありません。
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