洋上風力発電機が倒れない理由

 風力発電の普及が世界的に進んでいます。近年特に増加しているのが、洋上に風力発電機を設置する洋上風力発電です。
 陸上風力発電に比べて洋上風力発電では「風が安定する」「土地の制約がなく大型風車を設置しやすい」「騒音発生や景観破壊を防げる」といったメリットがあります。陸上の風力発電の適地が限られる日本では、特に大きな期待が集まっています。
 しかし、日本の近海は水深50 m以上と深いところがほとんどなのが弱点です。風力発電機を海底に固定して設置するためのコストが、水深2030 mのヨーロッパ近海での場合に比べて高くついてしまうからです。
 そこで、海底に固定せず海上に浮かべる風力発電機が研究されています。海に浮かべることができれば、海の深さに関わらず一定のコストで設置できるというわけです。





 しかし、普通に海に浮かべようとしても、すぐに倒れてしまうでしょう。だから、工夫が必要なのです。
 浮体式の風力発電機は、塔の上部が中空の薄い鉄で、下部は中空のコンクリートでできています。上部の方が直径が小さくなっていて、下部には海水を入れることができます。すると、海水を入れた状態の風力発電機の質量は下部に集中するため、重心はかなり低い位置になります。





 一方、浮力は水中に沈んでいる部分全体に均等に働くので、その中心は次のような位置(水中に沈んでいる部分の密度が一定な場合の重心の位置)となります。





 すると、波や風によって次のように風力発電機が傾いても、元へ戻す力が生じることになるのです。





 これが、洋上に浮く風力発電機が転倒を免れる仕組みです。
 今回の話は、身近にあるペットボトルを使って試すことが可能です。ペットボトルを空にして水に浮かべると倒れてしまいますが、ある程度の量の水を入れると転倒せずに水に浮かべることができます(うまくいかない場合は、小さなおもりのようなものを追加すればうまくいきます)。試してみてください。




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