慣性の法則の発見

 慣性の法則は、「力が働かなければ、止まっているものは止まったままだし、動いているものは等速直線運動を続ける」というものです。聞けば当たり前のように感じる、シンプルな法則です。
 しかし、この法則が発見されたのは今から約400年前です。それまでの長い間、人類はこの法則を知らなかったのです。では400年前までは、力が働かなければどのようになると考えられていたのでしょう。

 慣性の法則が発見されるまではずっと、アリストテレス(紀元前300年頃のギリシャの哲学者)の考えが信じられていました。「物体を動かしつづけるには力が必要。力が働かなければ、動いているものはやがて止まる」という考え方です。
 日常的な感覚だと、慣性の法則よりこちらの方がしっくりくるかもしれません。例えば、転がっているボールも放っておけばそのうち止まります。
 このアリストテレスの考えに異議を唱えたのは、イタリアのガリレオ・ガリレイです。そのきっかけになったのは、コペルニクス(ポーランドの天文学者)が発表した地動説でした(1543年発表)。

 コペルニクスの地動説に対しては、強烈な反発が起こりました。主な反論の内容は、「もし地球がものすごい速さで動いているのなら、その上に乗っている我々はみな吹き飛ばされてしまうではないか」というものと、「もし地球が動いているのなら、高い位置から落下したものは真下へ落ちないではないか」というものです。
 これに対してガリレオは、船に乗ったときを例に説明しました。
 等速度で動く船に乗っているとき、(どんなに船が速くても)吹き飛ばされることはありません。また、船の上で何かを落下させたら真下に落ちます(現代なら、列車や飛行機で考える方が分かりやすいかもしれません)。
 同じように、地球が動いていてもその上のものが吹き飛ばされることはなく、落下したものは真下へ落ちるのだ、という説明です。

 もしアリストテレスが考えたように、力が働かなければ動いているものはやがて止まるのであれば、船の上のものも地球の上のものも、その動きについていけなくなるはずです。しかし現実には、特に力が働かなくても動きつづけます。つまり、ガリレオの慣性の法則が正しいことになるのです。

 ちなみに、転がるボールがやがて止まる理由は、ボールに摩擦や空気抵抗など何かしらの力が働くからです。もし何も力が働かなければ、ボールはずっと動きつづけます。
 身の周りでそれを実現するのは難しいですが、例えばISS(国際宇宙ステーション)では慣性の法則を示す実験が行われています。


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