世の中には、高さが10
mを超える樹木が数多く存在します。かなりの体重になりますので、それを支えるのも大変そうですが、実はもっと大変なことがあります。それは、てっぺんまで水を吸い上げることです。
前回、手押し井戸ポンプの仕組みを説明しましたが、実は手押し井戸では約10
mの高さまでしか水をくみ上げることができません。このことを、ガリレオ・ガリレイは経験的に学んでいた井戸職人から教わりました。
そして、実験によってこの事実を解明したのが、ガリレオの弟子のトリチェリです。「トリチェリの真空」と呼ばれる、有名な実験です。
水銀の場合は76
cmまでしか上昇しませんが、この実験を水で行ったらもっと高く上昇します。水銀の密度は水の13.6倍なので、水は76
cmの13.6倍=約10
mまで上昇します(この高さで実験するのは大変なので、1
m未満の高さで実験できる水銀をトリチェリは使ったのです)。
このように、ポンプによって水を10
mより高くくみ上げることは不可能であることが分かります。それなのに、なぜ10
mよりも高い樹木は生きていられるのでしょう?実は、樹木は浸透圧という手段を使って水を引き上げています。
樹木の葉には、蒸散作用があります。水分を蒸散させることで、葉脈内の水圧を低くしています。すると、導管内の水圧の方が大きくなり、導管から葉脈へ水が浸透していくのです。この圧力が浸透圧です。
このように、蒸散によって浸透圧を生むことで、手押しポンプの限界を超える高さまで水をくみ上げる、植物の偉大な仕組みを知ることができます。
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